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 新宿某所とあるマンションの一室。見るからに高級そうなその部屋には、同じく見るからに高級そうなソファに隣り合って座る男女の姿。恋人同士かと思えば、二人の間には明ら様な空間があった。

「それで、臨也は私に何の用なのかな?」
「用が無くちゃ会えないような仲でもないだろ」
「用も無く会う仲でもなかったつもりだけど、見解の相違だね」
「じゃあその相違が無くなるようなことをしようか」

 男が女の頬に手を伸ばす。彼女はそれを避けるでもなく甘んじて受け入れ、頬を撫でる手を眺める。肌の滑らかさを楽しむかのように、輪郭をゆっくりとなぞるような動きを。

「抵抗しないんだ? 本当にこのままそういうことするよ?」
「臨也は抵抗するのを屈服させるのが好きでしょ。だからしない」
「俺のことを良くご存知で。でも、抵抗してもしなくても同じだけどね」

 トスッという軽い音と共に、広過ぎる位のソファに倒れ込む二人。顔の直ぐ横に手をつかれ、上から覆い被さられている。そんな状態になっても、女は自分の上にある男の顔を余裕ある表情で見ていた。

「……なに」
「いーえ、折原臨也ともあろう人が力付くなんて、らしくないなぁと」

 普段の彼なら自慢の情報で相手を無力にするなど造作も無い。にも関わらず、力で押し切ろうとしている状況は珍しいと。それを聞いて男は憮然とした表情で答える。

「勘違いするな、遊びだよ。それに、君相手に情報なんて意味ないこと分かってるくせにさ」
「当然じゃない。それが私の仕事であり、これもその一環だからね」
「遊びに仕事、俺達の関係って歪んでないかい?」
「まさか。至極正当に整然で清烈なまでに綺麗に割り切れる関係だよ」

 にっこりと微笑まれ、男は深い溜息を吐いて身体を起こす。それを引き止めるかのように、女が男の首に手を回して引き寄せる。一瞬のことだった。口に触れた柔らかい感触を認識した時には、それは離れていて、首に回されていた筈の手も外されていた。

「これも仕事の内なわけ?」
「さぁ? 都合の良いように解釈してもらって構わないけど」

 するりと下から抜け出した彼女は立って彼を見下ろしている。最初から可能であったのに、それをしなかったのは状況を楽しんでいたからか。すっかり機嫌が悪くなった男に対し、酷く愉しそうに女は語りかける。

「臨也には飽きないなぁ、君で遊ぶのは本当に愉しくて仕方ないね。普段気取ってる臨也のあんな表情見れるんだから」
「性格悪いな」
「臨也にだけは言われたくないよ」


【勘違いするな、遊びだよ】

(本気になったら負け、それを悟られたら終わり)
(今日も歪んだこの関係は続く)


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