「3歳差かぁ……」
「何、いきなり」
「別に、ふと気になっただけ」

『別に』なんて思ってなさそうな顔で言われても、ね。 僕だってこの年齢差を気にしたことが無いわけじゃない。

たった3歳、されど3歳。

もし、近くに住んでいたとしても、中学や高校が同じになることは無い。 こちらが入学する時には、入れ代わりで向こうが卒業してしまうから。 それが3歳という壁だった。 悩んでるのはそっちだけじゃないって分かってるのかな。

「同窓会……行くの?」
「まぁ行っても良いかなと思ってる、もう6年だし」
「ふーん、初恋の子とかに会えるかもね」
「は?」
「だから、小学校の同級生で初恋の子とか居たんでしょ。6年振りに会ったら凄い美人になってたりとかして……」

あぁ、そういうこと。 ついさっきかかってきた小学校の同窓会の知らせ。 僕のように、大学進学と同時に名古屋から出て行く奴も多い。 その前に、久しぶりに集まろうということだった。 特別に会いたい奴が居るわけじゃない。そういう奴とは今でも連絡を取り合っているから。 けど、断る理由も無いから行くつもりだったのだけれど。 どうやら彼女はそれがお気に召さないらしい。

「小学校に初恋の相手なんて居ないけど?」
「そうなの? でも佳主馬のこと好きだった子は居るよね。佳主馬なら絶対に小学校の頃から格好良かったと思うし……」
「やきもち?」
「う……違うとは言い切れないけど肯定もしません」
「俺だって気になるんだけどね。が小学校から高校までどんな風に過ごしたのか知らないし」
「本当?」
「こんなとこで嘘吐いてどうすんの。あのさ、俺だって気にしてるんだけど、年齢差」

どうして疑うのか。 僕がこんなにも気にかけるのは彼女だけだと言うのに。 初恋の相手だって目の前に居る。 絶対に気付いてないけど。 きっと、僕が健二さんに対しても嫉妬してたなんてことも知らないだろう。 こうして思っていることを全部言えるなら、苦労はしない……。

「中学とか高校で告白とかされてたのかなとか、誰かと付き合ってたのかなとか。気になることをあげたらきりがない」
「私も……同じこと気にしてた」
「3歳って大きいし、東京と名古屋ってまだ子供の俺達が簡単に埋められる距離じゃない」
「うん……」
「でもさ、過ぎた時間ってもうどうにもならないし、その分をこれから埋めていけば良いって最近は思えるようになった」

この春から僕は東京の大学に進学する。 同じ大学では無いけれど、今までよりは頻繁に会えるようになる。 これからは、文字と声だけで我慢する必要は無い。 そう思うだけで、4月からの生活に期待が膨らむ。 今日だってその準備で東京まで出てきたのだから。

「これから離れてた時間なんて気にならなくなる位のものをあげるよ。それだけの価値はあると思ってるし」
「佳主馬ってたまに凄く自信に溢れた物言いをするよね」
「当然だろ、俺を誰だと思ってんの?」
「キング・カズマ、だもんね」
「そういうこと」

ラブマシーン事件で一度はキングの座を失ったけれど、僕は再びキングとなった。 そうして頑張れたのも、彼女のおかげだと思う。 との約束が僕の背中を押した。 あの時、彼女に出会っていなかったら、今の『キング・カズマ』は居なかったかもしれない。 佳主馬にとって、そしてカズマにとってもは欠かせない人だった。

「同窓会、行って欲しくないんなら辞めるけど」
「ううん、行ってきなよ。佳主馬の話聞いてたら、いつまでもこだわってちゃ駄目だと思ったし。それに、私の我が儘で佳主馬のこと束縛したくない」
「へぇ。それなら多分俺のこと好きだった辻本って奴が居るんだけど、そいつと昔話に花咲かせても良いんだ?」
「それは駄目!! あ、違っ、今のはその……」
「冗談だよ。とりあえず、同窓会では可愛い彼女の自慢でもしようかな」
「……キャラじゃないくせに」
「聞きたいんだったら、俺の惚気話してあげようか」
「恥ずかしくて死にそうになるだろうから、遠慮しとく」

気にしていた身長は、中学の途中から伸びて卒業する頃には彼女を抜かしていた。 今では彼女の頭が僕の肩に届くくらい。 けれど、身長と違って決して縮むことはない3歳という差。 気にならないと言ったら嘘になるけど、そんな不安は吹き飛ばしてしまえば良い。 僕のものも、彼女のものも。
漸く此処まで来たんだ。 これからは、遠慮なんてするつもりはない。

だから、覚悟しててよね。