「それで、こんな所で何してるの?」
「買い物以外の何かに見えるなら、今直ぐ眼科に行きやがれ」
冷蔵庫の中身がそろそろ寂しいことになったので、はスーパーへと買出しに来た。
そこで思いも掛けない人物と遭遇している。
その人物の名前はバクラ。
某KC社長の次くらいにスーパーとかが似合わないと思われる。
「いや、バクラなら私の想像が及びも付かないことをするかと」
「失礼窮まりねぇな、おい」
「それほどでもないかな」
「褒めてねぇよっ!」
相変わらず冴え渡った突っ込みを披露してくれる。
バクラにしてみたら、突っ込みのつもりは無いのだろうけど。
加えて今日は、片手に買い物カゴを持っているので、怖さ半減、むしろギャグである。
「冗談はこの辺にしといて、何でバクラが買い物なんてらしくないことしてるわけ?」
これ以上バクラの機嫌を損ねては会話にならない、と判断したは話題を転換する。
『らしくない』などど言っている時点で、あまり転換の意味は無いが。
「宿主に押し付けられたんだよ。疲れてるから代わりに行ってこいってなぁ」
「へぇ……それでちゃんと来てるなんて、偉いね」
喋ってる間にも、バクラはカゴに新たな食材を入れている。
その選び方がまるで玄人のようだった。
「もしかして、今までにも何回か来てたりする?」
「悪いかよ……。放っとくとシュークリームとか糖分ばっか食べるから仕方ねぇだろ」
シュークリーム片手にゲームに没頭する了の姿が容易に想像出来る。
確かに、やりかねない。
それにしても……
「了の健康まで気遣うなんて、バクラってば随分と優しいね」
「なっ……わけあるか! オレ様は単にこの身体に倒れられると」
「あーはいはい、分かったから」
喋れば喋るほど、墓穴を掘っていることにバクラは気付いてない。
これが世に言う「ツンデレ」ってやつか、と妙な所で彼女は感心していた。
「で、は何で此処にいんだよ」
「私だって絶賛一人暮らし中だから、買い物くらいするよ」
「ほぉ……お前が料理出来たとは、意外だな」
バクラが料理する方が誰から見ても意外だと思うが、口には出さないでおく。
「今日の夕飯の材料も一緒に買おうと思ってたんだけど……」
不自然に言葉を切ったを見ると、その視線がバクラの手へと注がれている。
すなわち、買い物かご。
不吉な予感がバクラを襲う。
「おい、何考えてやがる」
「んー自分の分だけ作るのって面倒だし、獏良家にお邪魔して御相伴に預かろうかとv」
「断る」
「えーなんでよ、良いじゃん! 一人増えた所で大して変わらないでしょ?」
「変わるんだよ!」
バクラのかごを見るに、今日の夕飯はカルボナーラ。
卵をだまにせずに作れるかが決めてのパスタだ。
人数が増えれば当然パスタの量も増える。
茹でるだけ。と言ってしまえばそれまでだが。
「というわけで却下だ。自分で作れ」
「冷たいなぁ。仮にも私の幼馴染じゃない」
「宿主がな」
バクラが何を言おうと、は諦める気配が無い。
膠着状態が続くこと数秒。
「分かったよ、今日は諦めるよ、今日は」
「次もねぇよ」
「その代わり、バクラが家で料理本まで買ってエプロンして、了の為にご飯作ってあげてるって遊戯とかに広めるから」
漸く解放されたとバクラが息をついた瞬間に爆弾投下。
立ち去ろうとしたの肩を掴んで引き止める。
「ちょっと待ちやがれ。てめぇ、それを何処で聞いた」
「え、図星なの? 適当に言っただけだったのに」
バクラとしてはプライドとか色々なものが混ざった死活問題であったのに対し、はきょとんとしている。
「そっかぁ、バクラってば了の為にそこまでしあげてるんだねぇー」
「…………」
「それで、私の今日の夕食はどうなるのかな?」
「ちっ、作れば良いんだろ!」
形成逆転とばかりに笑顔で聞いてくるに、バクラの返答は一つしか残されていなかった。
「やった! バクラの手料理」
「宿主だけならまだしも、なんでオレがコイツの飯まで……」
「あ、安心して。バクラの邪魔はしないから!」
「手伝えよっ!」
そんなこんなで、の今日の夕飯は獏良宅でカルボナーラに決定。
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