eccentric person

獏良了はとても変わっている。 外見は悪くない、むしろ美少年と称される部類に入る。 ただ、中身が問題だった。

TRPGというゲームのシナリオを書くことが好きで、徹夜なんて良くあること。 偶に授業中に書いたりもしている。 本人曰く、『僕は頭良いから授業なんて聞かなくても平気なんだよ、テストの点数だってより良いでしょ』とのことだ。 事実だから腹が立つ。 こんなことはまだ序の口で、彼はTRPGのシナリオだけでなく、使用するフィギュアまで自分で造っていたりする。 それがまたやたらと精巧なものだったりするのだ。 ここまでくるとちょっとやばい。 恐らく、世間一般的には「ヲタク」と言われても良いレベルだと思う。 しかし見た目が全てを緩和させている。 全く以って、美形とはずるい。

そんな獏良は、私が心の中でこんなことを考えていることを知ってか知らずか、PSPで狩りに勤しんでいる。 ちなみにPSPは4代目。 前の3機はどれも限界まで酷使された後、ご臨終された。 でも、新型が出たからといって、買い換えたりしない点は評価する。

「了ー暇なんだけど」
「今討伐してるから、あと10分待ってて」
「モンハンって協力プレイするもんじゃなかったっけ?」
「協力する必要無いほど育てたからねー、HR300だしソロでも余裕。武器はガンスだよ」
「あーはいはい、やり込んだってことね」
がモンハン始めたら言ってね、クエストする時には寄生させてあげるから」

さっきから話し掛けてもこんな返事しか来ない。 そもそもやり込んでるなら討伐ってのにそんなに時間掛かるわけないし、最初に聞いてから既に30分は経ってるっての! どうせ1つ終わって、こっちが話し掛けないのを良いことに、次のを始めたに違いない。 あっちがゲームしてるのをただ待ってるだけなのも暇なので、私も鞄から取り出したDSを立ち上げる。 鞄にDSが常備されてる辺り、私も獏良並に駄目なのかもしれない。 いや、私の方がずっとマシだ。多分。

獏良の背中に寄り掛かるみたいに座って、ゲームをする。 広い部屋にわざわざ背中合わせに座って、無言でお互い違うゲームやってるとか、傍から見たら笑える図なんだろうな。 そんなことを考えながら操作を続けていると、不意に肩に重みを感じた。

「ねぇ、何やってるの?」

何時の間にか獏良が肩越しに覗き込んでいた。 10分経って……はいないと思う。 早く終わってくれる分には良いけど、肩に体重掛けないで欲しい。

「操作しにくい。手元狂うから体重掛けるの止めてよ」
「何やってるか教えてくれたら止めてあげる」

自分がゲームしてるときは邪魔するなと言わんばかりのくせに、人がしてる時にはこうだ。 獏良のことだから、教えなかったら本当にこのままなのは間違いない。

「……友達に無理矢理貸された恋愛シュミレーションゲーム、通称乙女ゲー」
「へぇ、ってそういうのするんだ、意外だなぁ」
「だから、『無理矢理貸された』って言ったでしょ。そもそも、こういうの携帯機器でやる感覚が理解出来ない」
「えー家でやるべきだって?」
「そう、電車の中で恋シュミとか有り得ないし」

公共の場で二次元と恋愛とか本当無い。 別に二次元との恋愛について否定するつもりは無いのだ。 ただ、そういうのは家で一人でテンション上げてやれば良いと思っているだけ。

「でもさぁ、外でやってる人あんまり居ないと思うよ? 僕見たこと無いし」
「ならDSとかPSPに移植する意味なくない? PS2で十分じゃん」
「そこは大人の事情ってやつなんじゃない」
「ま、私は何処であっても乙女ゲーなんてやらないけどね」
「ふーん、僕はギャルゲーやるよ」

あぁ、そうですか。 こうもあっさり暴露されると、批難する気も起きない。 そういうことは普通隠すものじゃないのか? そして、それすらも『獏良了だから』と言われれば納得出来てしまうのは、どうなんだろうか?

「……やるやらないは個人の自由だから、私は何も言いません」
「今やってるのは、所謂泣きゲーなんだけど、メインヒロインが1歳年上で同級生って設定でねー」
「何も言うつもりは無いけど、そんな話を聞くつもりも無いんですが?」

当たり前だけど、ギャルゲーの話とかされても困るし。 私もプレイしてたり、今後する予定があるならまだしも、そうでも無い人間に普通しないでしょ。 しかも女の子相手に。 いくら何でもそれ位気付けっての。

「あれ、もしかして、やきもち妬いてるの?」
「どうしてそうポジティブなのかなぁっ!?」

今の発言の何処からそんな発想に至れるのか不思議でならない。 前向きも程ほどにして欲しい。 それ自体は良いことだけど、行き過ぎると時には迷惑だ。

「大丈夫だよ」
「…………何が?」

こっちは会話が噛み合わなくて疲れた。 全然大丈夫じゃない。

「だって、僕が一番好きなのはだから」

不意打ちだった。 この流れでそんなこと言われるなんて思ってもいなかったから。 一番ってことは他にも居るのかとか、2次元と比べるなとか、言いたいことは色々あるのに、何一つとして出てこなかった。 背中を向けていて良かった。 こんな顔、見せられるわけがない。

「あ、照れてる? って分かり易いよね」
「黙れ莫迦」

顔なんか見えなくても、こっちの考えが筒抜けなのは分かっていたけど、認めるのは嫌だった。 それに認めたら、何か負けな気がする。

は照れると口が悪くなるんだよ。知ってた?」
「知るかっ! 重い、全身で圧し掛かるな!」
「あはは、可愛いなぁ」
「とりあえず、一旦その口閉じろっ!!」


良く言えばマイペース。 悪く言えば自己中でKY。
周りのことなんか気にしないくせに、人の邪魔はする。 会話が噛み合わないのなんていつものこと。 その上、顔は良いけどかなりのヲタク。
それでも私は全てを分かっていて部屋に遊びに行くし、今日も獏良了の恋人であることを続ける。

認めたくは無いけれど、こんな私自身も、相当変わってるのだと思う。


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