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「明けましておめでとうっ!!」


冬休みは終わり、今日から新学期だ。
年明けに初めて会う友人達には、やっぱりこれしかないと思う。
年始の挨拶。
皆も同じように返してくれる。
何歳の頃から始めたなんて覚えてないけど、物心が付いた頃からはそれが当たり前になっていたからか。

「あ、ヨハンだ。明けましておめでとう!」

人込みの中に居ても一際目立つ青い髪で、ヨハンは直ぐに分かる。
まぁ、例え姿が見えなくとも、見つけ出す自信はあるんだけれども。

「A Happy New Year!今年も宜しくな」
「…………」
「ん? どうした?」
「えと、突然英語で返されて、それがあまりに綺麗な発音だったから、ちょっと戸惑っただけ」

今までは皆日本語だったし。
そう、馴染んでいるから忘れてしまうけど、ヨハンはフランス人なのだ。
彼にとっては英語での挨拶が普通なのだろう、そしてそれ以上にフランス語が彼の母国語だ。
この場合は、まだフランス語で返されなかっただけマシと考えるべきか(だってフランス語で返されても分からない)

「あれ、違ってたか? 『明けましておめでとう』ってそういう意味だろ?」
「うん、それで合ってるよ。ちょっと異文化コミュニケーション?について考えてた」
「ははっ、何だよそれ」

意味は同じでも、言葉は全く違うもの。
これが文化の違いじゃなくて何だと言うのだ!
そういえば、年始の挨拶だけじゃなくて……

「フランスって年が明けてからはあんまり祝わったりしないって聞いたことがあるんだけど、本当?」
「そうだなー、フランスって言うよりヨーロッパがかな。年が明けるまではカウントダウンとかで町規模でお祭り騒ぎだけど、朝にはもういつも通り。
朝になるまでは徹夜で騒いでるから、1日は寝てる奴のが多いけど」
「――だから日本では3日まで休みで驚いたぜ。三が日だっけ?」
「そうそう。学校なんかは8日からが多いしね。だからアカデミアはかなり早い方じゃないかな」
「休み多いのは嬉しいけど、休みの3週間ずっと会えないなんて俺には無理だ。いやぁアカデミアで良かったなー寮だから休みでも会えるし」

普段なら絶対に聞き漏らさないヨハンの言葉が耳に入ってこない。
意外とヨハンの話がショックだったのかな。
だって日本とフランスの文化の違いを痛感してしまったから。
日本とフランス、時差は8時間。
こっちが昼の時、あっちは朝か。遠いなぁ……。

「文化の違いは大きいね」
「何言ってんだよ?」

ぽつりと呟いた筈の言葉はしっかりと聞き取られていた。

「確かに俺はフランス人で、君は日本人だけど、今こうやって同じ場所で言葉を交わしてるんだ。この瞬間に違いなんて無いだろ?」

そう言って、心配することなど何も無いというように笑顔を向けられる。

「うん、そうだね」

ヨハンに言われると何故だか簡単に納得が出来た。
さっきまで悩んでいた自分が莫迦みたいに思えてくる程に。

「それに、そんなに気になるなら来年はクリスマスからフランスで過ごせばいい。俺と一緒にさ」
「え、それってどういう意……」
「ヨハーン! 新年初決闘しようぜ!」

その時、丁度十代が遠くからヨハンを呼ぶ声が聞こえた。

「分かった! 今行く、十代」

それに応えたかと思うと、ヨハンは走って行ってしまう。

「ちょ、待ってよ、ヨハンっ!!」

このまま放置は酷くないですかっ!?


【I wish you a happy New Year】

(ねぇ、やっぱり十代も一緒なのかな。明日香、どう思う?)
(本人に聞きなさいよ(あそこまでストレートに言われて、どうしてそうなるのかしら?))


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