「また此処に居たの、遊星」
「そんなに来ているつもりは無いけどな」
「自覚無し?姿が見えないと思ったら大低そうだよ」
ネオ・童実野シティが見渡せる丘。
その場所からの光景、特に夕焼けについては一望の価値はあるだろう。
けれども、何度も来る場所か、と聞かれたらそうではない。
ならば何故、遊星は此処に来るのか。
それはシティとサテライトが統一されて、平和となったこの街の姿を確認する為であり、もう一つ――
「……許せない?」
「そうじゃない。だが、生きている間中、忘れることなんて出来ない」
「遊星のせいじゃない、それは皆分かってるのに?」
17年前に起こったゼロリバース。
それを引き起こしたのはルドガーであったが、原因となるモーメントを、そして遊星粒子を開発したのは遊星の父親である不動博士だった。
遊星はそのことに関して今でも罪の意識を背負っている。
そのせいでうなされていることも知っている。
そうして、ゼロリバースの悪夢を見た日にはこの丘へと来ることも。
でも、その傷を私が埋めてあげることは出来ない。
出来ることと言ったら、こうして独りで悩む遊星の側に居ることだけ。
それすらも、遊星の役に立っているか分からない。
むしろ私は邪魔になっているんじゃないだろうか?
「ごめんね」
そう思ったら自然と言葉が零れていた。
「どうして謝るんだ?」
「だって、何の役にも立てて無いから」
「そんなことはない」
「本当に?」
「あぁ、俺はずっとお前の存在に助けられてきた。今だってそうだ」
遊星のくれる言葉で心に引っ掛かっていた糸が解けていくような気がした。
励ましに来たのに、逆に励まされてるなんてやっぱり私は駄目だなぁ。
それでも、遊星の側に居たいという想いだけは誰にも負けない自信だけはある。
「俺がこうして丘に居ると、必ず迎えに来てくれる。それが、俺には凄く嬉しい」
「そんなことで良いの?」
「十分だ。初めて此処に来た時、消えてしまおうかと考えていた。恐らく、今もその考えは心の何処かにある。だから、迎えに来てくれることで俺は留まって居られる、大切な仲間達を残して居なくなったりせずに」
消えてしまいたい。
遊星がそれ程までに思っていたことを初めて知った。
消える。それがどんな意味かは分からないが、もしそうしていたならば遊星が私達の前から居なくなっていたことだけは確かだ。
それが避けられたなら、此処に来ていた意味は確かにあるのだろう。
「今はまだ無理だ。でも、いつかきっと俺もゼロリバースを受け入れられる日が来ると思う。だから、それまでこうして俺を迎えに来て欲しい」
「うん。私で良かったら、何度でも来るよ。遊星の姿が見えない時には、何時でも探しに来るから」
「ありがとう」
【生きている間中、忘れることなんて出来ない】
(消えない傷痕でさえ癒える)
(その時が来るまでずっと貴方の傍に)
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